PD-1抗体(オプジーボ、キイトルーダ)はどうやって効くのか?

がん免疫療法は古くから知られていましたが、科学的に十分な効果を得られるものがありませんでした。

そのため専門家の多くは、がん免疫療法はうまくいかない治療法と考えていました。

2015年、メラノーマに対してオプジーボが認可されたことにより、医療の現場は一変します。

がん免疫療法時代の幕開けです。

今では多くの癌腫で、治療の第一選択としてPD-1抗体(オプジーボ、キイトルーダ)が使われています。

オプジーボとは?

オプジーボやキイトルーダはPD-1抗体と言って、PD-1という分子を標的とした薬剤です。

PD-1分子は、京都大学の本庶佑先生が発見された分子です。

また、PD-1抗体であるオプジーボは世界に先駆けて日本で最初に認可されたお薬です。

PD-1分子の3つのすごいことは別記事を参照していただくこととして、今回はこのオプジーボの作用機序に関して解説したいと思います。

白血球の中の細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)

血液の中には白血球という集団が存在します。

この白血球は、細菌やウイルス、癌などを攻撃し体を防御する、免疫としての機能を有しています。

白血球の中にもいろいろな集団があり、そのうちのリンパ球の一部ががん免疫に重要です。

中でも「細胞傷害性T細胞」という細胞が、がんを直接攻撃しがん細胞を殺します。

細胞傷害性T細胞が完璧にがん細胞を処理できれば、がんは消滅するのですが、がん細胞は体の免疫システムから逃げるシステムをいくつも持っています。

がん細胞はPD-L1分子を発現して免疫から逃げる

細胞傷害性T細胞は、がん細胞を処理するため活性化するとPD-1という分子を出します。

このPD-1という分子は、PD-L1という分子と接着するとブレーキとして働きます。

もともとPD-1は、細胞傷害性T細胞が暴走しすぎないように抑えるための分子です。

がん細胞の一部は、細胞傷害性T細胞の攻撃を逃れるためにこのPD-L1を発現し、人の体に備わったブレーキのシステムを利用し免疫からの攻撃を逃れます。

PD-1とPD-L1がくっついてしまうと、細胞傷害性T細胞はブレーキがかかり、がん細胞を攻撃できなくなってしまいます。

オプジーボはPD-1とPD-L1の接着を阻害する

オプジーボは、このPD-1とPD-L1の接着を阻害しますので、細胞傷害性T細胞はブレーキが解除された状態となります。

そうなると、細胞傷害性T細胞は再び活性化してがん細胞を攻撃できるようになります。

こうやってオプジーボは、免疫を活性化させることでがんを治します。

まとめ

オプジーボは、PD-1とPD-L1の接着を阻害する薬剤です。

この阻害によって、ブレーキを掛けられた白血球の一部(細胞傷害性T細胞)が再び活性化します。

体の免疫力を高めることによって癌を攻撃する治療法です。

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