医学生も勉強するメラノーマの見分け方―ABCDルールー

ほくろとメラノーマを区別する方法としてABCDルールというものがあります。
これは、医学生が皮膚科の授業で必ずと言っていいほど勉強する内容で、医師国家試験で頻出される項目です。
今回はこのABCDルールについて、解説したいと思います。
ABCDルールを基準にホクロを観察すれば、メラノーマかどうか見分ける手助けになります。


A (Asymmetry:左右非対称)
メラノーマは基本的に、左右非対称の形をしています。
図のように中心で線を引いてみて、左右が同じ形をしているかどうかで判断します。
左右非対称ならメラノーマの可能性があります。
ではなぜメラノーマは左右非対称になるのでしょうか?
それは腫瘍内の癌細胞の多様性によるものです。
腫瘍、つまり癌細胞はそれぞれ違っていて、一見ひと塊のメラノーマに見えてもいろんなメラノーマ細胞の集まりで構成されています。
その中で細胞の増殖が違うメラノーマが組み合わさっていることで左右非対称性が生まれます。
増殖の早い細胞集団は早く拡大し、増殖が遅い細胞集団はあまり形を変えません。
結果として、不均一な形となって左右非対称として私達の目に映ります。


B (Borderless:辺縁不明瞭)
ほくろの辺縁がはっきりしているのに対し、メラノーマの辺縁は不明瞭です。
これも癌細胞の多様性によるものです。
メラノーマというは皮膚の色をつくる細胞であるメラノサイトが癌になったものです。
メラノサイトがつくるメラニンの量によって色の濃さが変わります。
ここでも癌細胞の多様性がキーワードになります。
メラノーマ細胞には多様性があることから、それぞれのメラノーマ細胞が作ることのできるメラニンの量にも差が見られます。
その結果、色ムラが出来たり、辺縁が不明瞭になったりします。


C (Color:色調)
辺縁不明瞭(Borderless)の部分で説明したように、メラノーマ細胞が作るメラニンの量は癌細胞ごとに違います。
その結果、メラノーマには色むらが出来ます。
真っ黒だったりそうでもなかったりと、黒は黒でもいろんな濃さの黒がメラノーマの中には混在します。
また、メラノーマは時々、勝手に消えてしまうことがあります。
(これを自然消退といいます。)
自然消退したからといって癌細胞が完全に消えてしまうわけでもないのですが、メラノーマの病変の中で自然消退している部分があるとその部分は普通の肌色に戻ります。
黒い部分があったり、色むらがあったり、時々黒い中に肌色の部分があったりするのが特徴です。


D (Diameter:直径)
メラノーマかどうか一番解りやすい項目として大きさがあります。
メラノーマは癌ですので、時間とともに大きくなっていきます。
その直径が6-7mmを超えるとメラノーマの可能性が高くなります。
診察では普通、ノギス(いわゆる物差し)を使って大きさを測って記載しておきます。
1ヶ月後、半年後と経過をみていき、大きくなってくるようなら要注意です。
これは完全に信州大学の恩師の受け売りですが、大きさを判断するのに一番お手軽なのは鉛筆です。
鉛筆の直径がだいたい7mmありますので、鉛筆の裏側を押し当ててみて隠れるかどうかチェックしてみると簡単にわかります。
話が少し脱線しますが、私は医学部の学生に授業で必ずABCDルールと鉛筆の話をします。
もう何年もやってますので、そろそろオリジナルの新しい例えを作ろうと思って見つけ出したのが、マクドナルドのストローです。
マクドナルドのストローも直径7mmあるようです。
イメージとしては解りやすいと思うのですが、実用的ではないのが欠点です。
「気になるホクロがあったらマクドナルドのストローを当てて隠れるかどうかチェックしてください。」
うーーん。。。やはり鉛筆には敵わない。


まとめ
今回はほくろとメラノーマを区別するABCDルールを説明しました。
左右非対称、辺縁がわかりにくく、色がまだら、大きさが6-7mm以上、など、ABCDのどれかに当てはまればメラノーマの可能性があります。
是非一度セルフチェックしてみてください。
ABCDルールは覚えやすく解りやすい半面、絶対という基準でもありません。
ABCDルールに当てはまらないから大丈夫と素人判断せずに、心配なほくろは皮膚科専門医に診察してもらうことが大事です。

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